警告書を受け取った方
警告書を受け取ったら
ある日突然警告書が届いたらどうしたらよいでしょうか。「知的財産権を侵害する」「直ちに製造(販売)を停止しろ」「法的手段に訴える」など、恐ろしいことが書いてあります。回答期限が設定されており、無視すると裁判所に訴えれてしまうかもしれません。

警告書を受け取ったら、通常は相手方に「回答書」を送付します。まずは落ち着いて事実確認と状況分析をしましょう。そしてなるべく早く専門家に相談することをお勧めします。警告書には回答や対応の期限が設定されていることがほとんどです。そしてほとんどの場合、その期間は非常に短期間です。対応の検討や資料の収集には時間がかかるので、一刻も早く動き始めることが肝要です。

警告書とは?
様々な企業活動をする中で、貴社の事業内容が、他人の知的財産権の内容とぶつかってしまうことはよくあります。できるだけ事前に調査してリスクを減らしておくことが望ましいですが、必ずしもすべてのリスクを避けられるわけではありませんし、貴社と権利者の見解が異なることもあり得ます。権利者は、貴社の活動の一部が知的財産権を侵害すると判断した場合、そのような活動を停止するよう通知することがあります。その書面を警告書と呼びます。

警告書は、権利者が貴社との争いを開始するという意思表示をする役割を果たします。後々に法的効果を発揮することもありますし、また、訴訟に発展した場合にこの内容が裁判所の判断に影響することもある、重要な書類です。
なお、警告書は、他に「警告状」「催告書」「通知書」などの表題となっていることもあります。

警告書への対応方法
警告書を受け取ったら、以下の順序で対応をします。落ち着いて、かつ迅速に対応しましょう。

  1. 主張・請求内容を把握する
  2. まずはどのような権利・理由に基づいて、どのような主張がされているかを確認しましょう。
  3. 相手の権利内容及び有効性を確認する
  4. 相手が主張する権利の内容を確認します。特許権、実用新案権、意匠権、商標権ならば、特許庁から登録情報を入手します。取り急ぎはJ-PlatPatで情報を確認するのがよいでしょう。その後正式に対応する際には、登録原簿を取り寄せます。無効審判などで権利を潰せないかどうかを検討することも忘れてはいけません。
    著作権の場合は登録が存在しないので、本当に著作権が発生しているかその著作物の内容を検討し、また、相手方が本当に著作権者であるかの調査も行います。
    不正競争防止法が根拠となっている場合は、そもそも何かの権利をするという性質のものではありません。相手のどのような商品等表示や商品形態を根拠に、貴社のどのような行為が問題とされているのかを確認します。
  5. 対応方針を決定する
  6. 事実関係の確認が終わったら、どのように対応するか、大まかな方針を決定します。すなわち、相手の主張に対して争うのか、主張を認めるのかを決めます。場合によっては無視して構わない警告書もあります。
  7. 主張内容及び落とし所を決定する
  8. 上記で定めた方針に従って、具体的にどのような主張をしていくかを検討します。また、どのような結論を導くのかも重要なポイントです。警告書対応は、要は企業間の交渉です。貴社と相手方がそれぞれ目標を設定して、お互いの主張を通して妥当な落とし所を探していく作業です。十分な合理性をもって、戦略的に対応しましょう。
  9. 回答書の作成及び送付
  10. 対応方針及び内容が決定したら、実際に警告書を作成します。専門的な内容になることが多いので、専門家に依頼することをお勧めします。
警告書の分析ポイント
警告書にもいろいろなものがあります。かなり深い部分までしっかりと検討されているものもあれば、単なる嫌がらせとしか考えられない適当なものまであります。主に以下の項目を検討することで、相手が警告書を送ってきた理由を推測することができます。

  1. 根拠となる権利・法律
  2. 相手方の主張の根拠となる権利や法律の種類で、警告の「強さ」がある程度計れます。例えば、特許権や意匠権、商標権に基づく場合は、相手方は比較的本気で潰しにきていることが多いです。これらの権利は手間とコストをかけて取得されるものなため、そもそも相手方にとって重要な内容であることが多いのです。
    一方で、著作権に基づく場合は、注意が必要です。特に商品デザインについて著作権侵害を主張するものは、単なる言いがかりであることが多いです。著作権は登録が不要なので、権利が発生しているかどうかわからない状態で警告書を送れてしまいます。逆にいうと、貴社がその内容の妥当性を吟味・検討する必要があるのです。
    不正競争防止法を根拠にする場合は、さらに注意が必要です。不正競争防止法に規定する不正競争行為に該当するか否かは、相手の商品等と貴社の商品を直接比較する必要があります。一般に、不正競争行為に該当するための要件は厳しく、意匠権や商標権が存在しないのに不正競争行為に該当するというケースはあまり多くありません。不正競争防止法に基づく警告書の場合は反論の余地が大いにあるので、早々に諦めずに専門家に相談してください。
    なお、実用新案権に基づく場合は、相手方は原則として実用新案技術評価書を入手していなければいけません。手続きの合法性は回答書の内容に影響を与えるので、こうした点も確認することが重要です。
  3. 差出人
  4. 差出人は、権利者本人(=メーカー等)か、その代理人である弁理士・弁護士であることがほとんどです。一般に、弁理士や弁護士が代理人として印を押して送る場合は、相手はそれだけのコストをかけているので、本気なことが多いです。一方で、権利者が本人の名義で直接送ってくる場合は、相手にとってそれほどコストをかける価値がない場合があります。文面だけ弁護士等に作成してもらい、書面自体は自分の名義で作成・発送すれば、そのぶんコストを抑えられるからです。ただし、ある程度の規模以上の企業の法務部や知財部が自己の名義で送ってきた場合は、必ずしもそうではないので注意してください。
  5. 発送方法
  6. 内容証明や配達証明で届いた場合、正式な方法で対応しようとする相手方の意思が読み取れます。ただの書留や普通郵便の場合は、複数の者に同時に書類を送るのでコストを抑えたいという事情があるのかもしれません。バイク便で届けられた場合はかなり急いでいるのでしょう。
  7. 請求内容
  8. ほとんどの場合、製造や販売の即時停止が求められます。それに加えて、損害賠償や、ライセンス交渉への言及がある場合は、相手方が無難な落とし所を模索していることが伺えます。
対応方針の決め方
警告書に対してどのように対応するかは、ケースバイケースです。相手方の主張や請求の妥当性を検討した結果、争っても勝てないと判断した場合は、最初から和解の方向で検討するのが合理的なことが多いでしょう。ただし相手方の本気度や経済状況によっては、それ以上手続きを進めると、相手方は仮に勝ち目があっても対応したくないと考えるかもしれません。そのような事情を利用して、交渉を有利に進めることができることもあります。
あるいは、検討した結果相手方の主張には合理性がなく、言いがかりにすぎないとの結論に達した場合は、回答書で真っ向から反論しようと考えるのはある意味当然のことです。しかし、必ずしも完全勝利を目指さず、相手にも多少利がある落とし所を探すことが必要なこともあります。相手方も最終的には人間であり、また今後も競業関係を継続する相手でしょうから、ひとつの案件で全面的に争うことが貴社の事業全体に良いかどうかは慎重に判断すべきです。
結局のところ、警告書の妥当性のみならず、相手方の真意や経済状況、案件の重要度、貴社と相手方の関係、貴社の予算やマンパワーなどを総合的に判断して、対応方針を決定します。
輸入者・代理店・卸売店・小売店の方
自分が製造した商品ではなく、仕入れた商品を販売しているだけなのに、警告書が届くことがあります。実はその商品が知的財産権侵害をするものである場合、法律上は、貴社の行為も権利侵害となってしまいます。商品を販売する行為は、法律上「譲渡」という概念に含まれ、これは知的財産権で保護されています。輸入者の場合は、「輸入」行為そのものも権利侵害になります。

そうした行為について警告書を受け取ったら、まずは製造者に相談するのがよいでしょう。逆に、仕入先などの情報を回答してしまうと、製造者にとって何らかの不利益が生じるかもしれません。もともとは知的財産権を侵害する商品を製造する行為が原因ですので、製造者に対応してもらうのが筋です。すべての対応を製造者に委ね、コストをかけずに済ませるのがよいでしょう。ただし警告書への回答自体は必要なこともあります。その内容もまずは製造者に相談しましょう。

なお、小売店などに、知的財産権侵害することを根拠に、その商品を仕入れないように通知されることがありますが、このような行為は不正競争防止法で禁止されている場合があります。通知を受け取ったら、これもすぐに製造者に報告してあげるのがよいです。

警告書は怖くない!
警告書が届いても、必要以上に恐れる必要はありません。相手方はいきなり訴訟を提起することもできたのに、まずは話し合いで解決しようと手紙を送ってきてくれたのです。相手方の真意を探りつつ、双方にとって無難な落とし所を探していくチャンスをもらえたと考えましょう。また、考えようによっては、競業他社である相手がどのような部分を重要だと捉えているか、その技術などについてどのような見解を持っているかを知る格好のチャンスです。警告書対応は、法律的な側面に加えて、商売上の交渉という側面もあります。普段売上を競い合っている相手とコアな部分について接触できる貴重な機会となるかもしれません。

なお、警告書では、「損害賠償を請求する」「法的手段に訴える」などということが記載されています。この部分をみて「裁判になったら大変だ!」と慌てる必要はありません。これは定型文で、相手もとりあえず記載しているだけです。予算などの観点から、相手も裁判などしたくないことがほとんどです。淡々と、合理的に対応すれば問題ありません。

専門家への相談のタイミング
警告書を受け取ったら、一刻も早く専門家に相談することをお勧めします。前述のとおり、警告書対応にはあまり時間的余裕がありません。しっかりと対応するために、早めに専門家に相談しましょう。

弊所では、警告書対応のご相談を、無料で承っています。回答書の作成をご依頼いただくまで、料金は発生いたしません。警告書の一次的な検討及び対応方針のアドバイスは、無料です。どうぞお気軽にご相談ください。

費用
代理人名で回答書を送付する場合、弊所の料金表は以下のとおりとなっております。

  1. 回答書作成及び送付費用 : 80,000円(2通目まで)*1
  2. 回答書作成及び送付費用 : 50,000円(3通目以降)*2
*1回答書に対して相手から反論があった場合、回答書を更に1通送る費用が含まれます。
*23通目以降の回答書が必要になった場合のみ、1通ごとに本費用が発生します。
※ 2016年より、成功報酬を廃止しました。これに伴う他項目の値上等はございません。
回答書を送った後、相手が内容の一部あるいは全部に反論をしたり、交渉を迫ってくる場合があります。そのような場合は、書類等でのやり取りを継続する必要が生じます。2通目の回答書を送付する費用は、警告書作成費用に含まれます。多くの場合はこの段階までに解決します。3通目以降の回答書が必要な場合は、別途作成費用が発生します。
回答書作成についてのご相談は無料です。
こちらからお気軽にお問い合わせください。